お役立ちコラム
遺言書は「やさしさの手紙」です(自筆証書遺言の書き方)
こんにちは 神戸明石相続アシストを運営する司法書士の山下です。
相続のトラブルが発生してしまった場合、「親父が遺言書さえ書いていてくれれば、、、」
というふうに遺言書さえあればトラブルが回避できただろう事例が数多くあります。
これは「相続トラブル」は「亡くなった人が死後には意思表示が出来ない」ため
相続人間で話合いで相続財産の分配等を決める必要があるからです。
「遺言書」が残っていれば「亡くなった人の意思」は遺言書に記載されているので、
基本的に遺言書とおりの相続財産の分配が行なわれ、相続人間の話合いが不要になりトラブルが非常に起きにくくなります。
1.遺言書の概要
遺言書はこのように相続のトラブル防止に重要な役割をもっています。
しかし実際の相続手続きの中で遺言書がある「相続」は1割にも満たないのが現状です。
自分の家族にかぎって相続トラブルになるとは思いたくもないですし、特に財産があるわけでもないし、
会社を経営しているわけでもないしといった漠然とした理由で、遺言書を用意されていない場合が大半でしょう。
遺言書の書き方は法定されていて正確な知識をもって書かないと無効になりかねないのですから用意されないのも無理もありません。
もっとも遺言書は本人が自発的に書かない場合、配偶者や子供から書いて欲しいとお願いするには、
かなり気が引け言い出しづらいものです。家族をトラブルから守る大切な役目と考えて自ら遺言書は書くようにしたいものです。
遺言書には一般的に使われるものとして2種類があると覚えていただければ大丈夫です。
1つ目は「自筆証書遺言」、もう1つは「公正証書遺言」です。
自筆証書遺言とは自分で遺言を手書きして書くもので、手軽で費用がかからないという特徴があります。
デメリットは、保管に不安があったり、様式や内容が法定事項を満たしていないと無効になってしまう場合があることです。
公正証書遺言とは公証役場にて公証人が作成する遺言です。
費用はかかるものの原本は役場に保管され紛失の心配がないことや、
様式や内容も公証人が確認するため不備のない遺言書が出来るというメリットがあります。
2.自筆証書遺言の書き方(様式編)
自筆証書遺言は自分で書けて手軽に作成できる一方で、法定の様式を守らないと無効になってしまいます。
法定の様式を紹介しますのでご確認下さい。
【1】「遺言書」「遺言状」などのタイトルを付ける
はじめに遺言書であることがはっきりとわかるように、タイトルを「遺言書」「遺言状」などとします。
これは法定事項ではありませんが、相続人に明らかに遺言であるとわかってもらうために必要です。
【2】全て自書する
自筆証書遺言は必ず自筆で自書して作成しなければなりません。
「自書」は、偽造・変造を困難にし、遺言者の真意によるものであることを担保するための要件だからです。
ですから代筆や、パソコンなどで印字して作られたものは無効になります。
また、録音やビデオによる録音・録画による遺言も認められていません。
うっかり銀行の口座の表示や不動産の表示だけパソコンで作成してしまうと全体が無効となります。
【3】日付を入れる
日付は、作成時の遺言能力の有無や内容の抵触する複数の遺言の先後を確定するために必要とされており、
この記載を欠くと無効となります。日付は年月日を正確に書く必要があります。
記載は元号でも西暦でも、また、漢数字でも洋数字でもかまいません。
「平成○年×月吉日」のような書き方では、具体的な日を特定できないので無効となるのでご注意下さい。
【4】印鑑で押印する
押印も自書と同様に遺言者の同一性、意思を確認するための手段となるため必要となります。
この場合実印でなくとも問題ありません。 遺言書が複数枚になる場合は、綴じ目に契印を押します。
3.自筆証書遺言の書き方(内容編)
内容は法的に記載すべき事項(遺言事項)と法的には効力がなくてもモメないために
書いておいたほうがよい事項(付言事項)を書きます。
遺言事項には相続財産に関してどの相続人にどのような割合で分配するかを記載します。
また相続人でない人にも遺贈ができます。
付言事項は家族へのメッセージや財産分配の理由などを記載します。
とくに分配割合が異なる場合にはその理由を書いておく事がトラブル防止や家族の納得のために重要になります。
遺言書(サンプル)
第1条 遺言者は,下記不動産を,遺言者の長男○○○○に(昭和○年○月○日生)に相続させる。
所在 兵庫県神戸市垂水区 1番1
地目 宅地
地積 100.00㎡
第2条 遺言者は,所有する預貯金を次の割合で相続させる。
①長男○○○○に7割の割合
②長女○○○○(昭和○年○月○日生)に3割の割合
○○銀行××支店 口座番号123456
付言事項
長男○○には長く介護をしてもらい大変感謝しています。
よって多く相続させますが長女○○も納得してください。
兄妹仲良く助け合って暮らしてください。
平成○○年○月○日 神戸市垂水区高丸四丁目○番○号
遺言者 ○○○○ ㊞
詳細な財産の記載方法
【1】不動産の書き方
たとえば「神戸市垂水区の土地」と書いただけでは、
他の土地と 区別がつかない可能性がありますから、
不動産登記事項証明書(登記簿謄本)をみながら、 記載してください。
良い例
所在 兵庫県神戸市垂水区
地番 1番1
地目 宅地
地積 100.00㎡
悪い例
神戸市垂水区の土地
【2】預貯金の書き方
「○○銀行の預金」としただけでは、同じ銀行に他の口座があるかもしれません。
下記のように、預金の種類や口座番号などで具体的に特定して記載します。
良い例
○○銀行××支店 口座番号123456
悪い例
○○銀行の預金
【3】株式等の有価証券
同じく「株式」だけでは、複数の銘柄を保有していた場合に、どれを指すのか分かりません。
特定のために発行会社名および株式数を明記してください。
良い例
○○株式会社発行の株式 10,000株
悪い例
株式
【4】ゴルフ会員権
ゴルフ会員権については、預託金額の違いなど複数の種類がある場合があるので、証券番号まで記載します。
良い例
○○ゴルフ株式会社 ゴルフ会員権(証券番号○○○○)
悪い例
ゴルフ会員権
4.公正証書遺言のすすめ
当事務所ではお客様に遺言の相談を頂いた場合は必ず「公正証書遺言」をおすすめしています。
公正証書遺言は紛失や変造の危険がないばかりか、いざ遺言を実行する際にも家庭裁判所での「検認」手続きを経ることなく実行が出来ます。
検認手続きは難しい手続きではありませんが、相続人が家庭裁判所に呼び出されて遺言書を確認する手続きなので、
手間がかかったり、もらえる分が少ない相続人からは不平が出たりする場合があります。
確実にスマートに遺言を実行できる公正証書遺言をぜひご利用下さい。
当事務所では相続、遺言に関する相談を随時受け付けています。
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