お役立ちコラム
2022/09/09
内縁の妻は賃貸住宅に住み続ける事ができますか?
こんにちは 神戸、明石、加古川の相続手続きおまかせ下さい。司法書士の山下です。
内縁の妻は賃貸住宅に住み続ける事ができるでしょうか?
賃貸住宅に住んでいた配偶者が亡くなった場合、その相続人は「建物賃借権」を相続することが出来ます。
そのため、例えば同居していた妻と子供が相続した場合は当然に賃借権は妻と子に相続されます。
相続は包括承継であり、賃借権の譲渡ではないので家主の承諾は不要です。
また承諾料や名義書換料、更新料の支払の必要もありません。
では内縁の妻(内縁の養子も)が亡くなった人と同居していた場合はどうでしょうか。
内縁の妻には相続が認められていませんが、建物が「住居用」であれば「他の相続人がいない場合」には
借地借家法36条により内縁の妻は賃借権を引き継ぐ事が出来ます。
借地借家法36条1項
居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、
建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、
その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを
知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
もっとも、他に相続人がいた場合には上記の適用が無く、賃借権は相続人が相続することになります。
相続人と内縁の妻の関係が悪かった場合などは、相続人から追い出しを迫られる場合があるかもしれません。
また家主からも追い出しを迫られるかもしれません。
この場合、内縁の妻は追い出しを拒否できるでしょうか?
拒否できます。
内縁の妻は賃借人と「同居」し生活を共にしてきており、配偶者の死亡という偶然によって建物に住めなくなるとすると保護に欠ける結果になります。
また家主にとってもこれまでと建物の使用者は変わらないのだから不利益になるわけではないといえます。
そのため、内縁の妻は家主からの明渡請求(追い出し)を拒否する事が出来ます。
拒否できます。
相続人は賃借権を相続しているとはいえ、これまでその建物には内縁の妻が住んでいたわけで、
明け渡しを要求する事は内縁の妻に酷なことです。
そのため、特別な事情がない限り相続人からの明渡請求は権利の濫用といえ拒否が可能です。
居住権は人の生活にとって欠かせないものであり出来るだけ保護するというのが判例の方向性です。