お役立ちコラム
2022/09/09
相続人で無くなる、相続人にしたくない
こんにちは、神戸市垂水区の司法書士事務所山下リーガルサービスです。
両親や配偶者が亡くなるとその子や配偶者は相続人になります。
そのように相続人になる予定の者を「推定相続人」と呼びます。
しかし推定相続人でも必ず相続人になれるわけではありません。
今回は相続人になれなくなってしまうパターンを紹介します。
「親の遺産を早く相続するために親を殺した」「相続の取り分を多くするため兄弟を殺した」などこのような場合にも通常と
同じく相続を認めると、反社会的な行為に法律が味方したことになってしまいます。
そのような社会正義に反する場合に相続権を認めるわけにいかないため、法律上当然に相続人になる資格を失う「相続欠格」の制度(民法891条)があります。
相続欠格事由に当たる場合は当然に効果が発生するため、裁判所への申し立てなどの手続きは一切必要ありません。
欠格事由が相続発生後に生じた場合は、相続の開始時に遡及して効果が生じ、相続人でなかった扱いとなります。
相続欠格の効果は被相続人との関係においてのみ生じるため、例えば母親との関係で相続欠格となった子は、
父親の相続においては相続欠格ではなく「相続人」となることができます。
また相続放棄と異なり効果は本人に限られるため欠格者の子は代襲相続をすることができます。
相続欠格の要件は以下のようになります。
・故意に被相続人あるいは相続について先順位・同順位の相続人を殺し、又は殺そうとして、刑に処せられた者
・被相続人が殺害されたことを知ったにもかかわらず、これを告発せず、又は告訴しなかった者
・詐欺又は強迫によって、被相続人が遺言を作成したり、既にしてある遺言を取り消したり、変更したりすることを妨げた者
・詐欺又は強迫によって、被相続人に遺言をさせたり、既にした遺言を取り消させたり、変更させたりした者
・言書を偽造したり、既にある遺言書を変造したり、破棄したり、隠匿したしたりした者
遺留分を有する推定相続人に著しい非行の事実がある場合に、家庭裁判所に廃除の請求を
することで遺留分を含む相続権を剥奪する制度です(民法892条)。
先の相続欠格と異なり、被相続人の意思によって相続権を奪うことができます。
廃除には理由が必要で主な廃除理由は以下のような場合になります。
・被相続人を虐待した場合
・被相続人に対して、重大な侮辱を与えた場合
・推定相続人にその他の著しい非行があった場合
家庭裁判所はこの申立てに対し申立人の意見のみではなく相手方の意見も聞いて公平な判断を行います。
審議は慎重に行われ、実際に相続廃除が認められる場合は多くありません。
相続廃除は遺言で行うことも可能です。これは被相続人が生きているうちに廃除の
申し立てをすると暴力などを受ける恐れがある場合などを考慮したものです。
もっとも推定相続人が異議申立てをすると認められない場合が多いことも事実です。