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全財産を一人に相続させる遺言(遺留分侵害の遺言)作成時のアドバイス

全財産を一人に相続させる遺言(遺留分侵害の遺言)作成時のアドバイス

こんにちは 神戸須磨垂水、明石を中心に相続手続きをサポートしている司法書士の山下です。

 

6月に入って梅雨になるかと思いきや、ほとんど雨が降りません。夏の水不足が少し心配になっています。

 

さて、今回は遺言で注意すべき「遺留分」をテーマに書きたいと思います。

 

例えば相続人が2人いる場合にどちらか片方に全財産を相続させる旨の遺言を書きたい場合、

 

必ず遺留分についての検討したうえで遺言を作成するべきです。では早速内容に入ります。

 

1.相続と遺言(遺留分)の基礎知識

 
相続が発生した場合、民法では相続人の相続順位に応じて相続分(法定相続分)が定められています。

 

もちろん法定相続分に従わない相続手続きも可能で、その場合は相続人間で「遺産分割協議」を行って全員の同意にて決定することになります。

 

ここで遺言があると法定相続分に関係なく財産を移転することが出来る(相続人以外の第三者に全部の財産を渡すことも可能)のですが、

 

それでは本来相続権のある人の保護が十分ではないとの趣旨から配偶者、子、直系尊属には法定相続分の2分の1が「遺留分」として確保されています。

 

具体的には遺留分を侵害する遺言がなされている場合でも遺留分を主張すればその財産を取り返すことが出来ます。

 

2.遺留分についてもう少し詳しく

 
遺留分を侵された場合は遺留分減殺請求をします。

 

これは意思表示のみで足り相手方に届いた時点で効力を生じます。

 

現実には話し合いや調停、場合によっては裁判によって財産を取り戻すことになります。

 

ではいつまでも遺留分を請求できるのかというと、そうではなく時効が定められています。

 

①遺留分権利者が相続の開始を知り、且つ被相続人の財産の贈与又は遺贈があった

 

事実を知りその贈与又は遺贈が遺留分を侵害していることを知った場合その時から1年

 

②相続の開始の時から10年

 

以上の経過により遺留分減殺請求権は時効により消滅します。

 

3.わかりやすくまとめると

 
遺留分を侵害する遺言は可能です。

 

遺言どおりに不動産の登記も預金の分配も出来ます。

 

しかし遺留分減殺請求をされると遺留分を支払う必要があります。

 

遺留分減殺請求権は相続開始から10年で時効消滅します。

 

4.遺留分を侵害する遺言を作成する際の3つのアドバイス

 
遺言を作成する方の状況により、ほぼ減殺請求がされると思われる場合や、

 

何事も無く減殺請求権も時効にかかる場合等さまざまだといえますが、減殺請求をされた場合に備えての対策があります。

 

1つは減殺請求された場合の減殺の順序をあらかじめ指定しておくことです。

 

「遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。」のが民法の定めですが、

 

財産が不動産と現預金だった場合、不動産と金銭の一定割合を渡すことになりかねません。

 

そういったことを防ぐため「減殺は現預金から行う」旨を指定しておけば不動産が減殺対象になることを防げる場合があります。

 

2つ目は事前に遺留分の放棄をさせておくことです。

 

慰留分は遺留分権を持つ者が家庭裁判所に申立てすることで事前に放棄させることが出来ます。

 

あらかじめ「何らかの財産を渡す等の代わりに慰留分を放棄させる」ことをすることで慰留分請求を心配する必要がなくなります。

 

3つ目は遺言書に理由などを記載しておくことです。

 

これは法律的な話ではないですが、遺言書の付言事項(法律的な効力は発生しないが記載している事項)に

 

遺留分減殺請求をしないで欲しい旨を記載することです。

 

遺留分を侵害する遺言を作成する場合、必ずなんらかの事情があってのことだと思います。

 

そこで、遺言書の付言事項として例えば「遺言では長男に全財産を渡すけれどもこれは○○

 

家を継いでもらうためで他の子供たちは理解して遺留分減殺請求はしないで欲しい。」等と記載するものです。

 

法律上の強制力は無いためあくまでも心情に訴えるものですが、遺言者からのメッセージがあれば

 

遺留分を侵された場合でも納得しやすいのではないでしょうか。

 

以上 今回は遺言と慰留分についてでした。

 

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